桜木紫乃作品初映画化   篠原哲雄監督新作『起終点駅ターミナル』

直木賞作家・桜木紫乃作品の初映画化決定した。2012年に発表された同名作品を原作とした本作『起終点駅 ターミナル』。

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あらすじ

物語は、鷲田完治の過去から始まっていく。学生運動の時代にかつて付き合っていた結城冴子が突然姿を消してから10年後、弁護士と被告人として2人は再会をする。昔の関係に戻るまでに時間はかからなかった。これからの未来を完治が約束するも、彼女は再びある形で自ら姿を消してしまう。

25年の時が経ち、釧路で国選弁護人をしていたある日、弁護を担当した敦子が突然家に訪ねてきて、ある男を捜して欲しいという。

個人の弁護は引き受けないと断るも、ひょんなことから朝ご飯を一緒に食べることに。完治の料理を食べた彼女は、満面の笑みで美味しいと喜ぶ。一種の“ 食べる ”という喜びを共有した2人には、そこから男女・親子とも異なるある絆が生まれていく。

~キャスト~
鷲田完治 (佐藤浩市)
椎名敦子 (本田 翼)
大下一龍 (中村獅童)
森山卓士 (和田正人)
大村真一 (音尾琢真)
南 達三 (泉谷しげる)
結城冴子 (尾野真千子)

 

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http://www.cinemacafe.net


 

篠原哲雄監督  独占インタビュー

 

Q、『山桜』藤沢周平・『命』柳美里・『地下鉄メトロに乗って』浅田次郎と有名な小説の原作が多く見受けられますが、小説がお好きなのでしょうか?

 A、小説はもちろん好きです。でも今までの映画化作品、自分からの提案でなく他の方からの依頼がほとんどでした。

 

Q、今回の『起終点駅 ターミナル』については監督からのオファーだったのですか?

A、今回も違うのですが(笑)、自分とは6本一緒に作品作りをしているプロデューサーから薦められ、すぐに原作を読み、過去をもった男のいわくありげな話として興味を持ちました。すでに第一稿の脚本も出来てきて、人間の弱さを克服していく様が面白く撮りたいと思いました。

 

Q、原作は短編小説ですが、映画で長編にするにあたり、力を入れた事とは

 A、桜木紫乃さんの原作では、行間を大事に読み手の想像を膨らませる描き方をしている。例えば、冴子の死に対する表現はたった一行です。なぜその選択をしたのか分からなかったんです。恐らく、2つの考えが出来る。女性は愛の可能性が無くなり、希望が消えた瞬間に死を選ぶ。もう1つは、女性は幸福の絶頂にいるときにこれ以上の幸せはないと、自ら死を選ぶこともあるのではないかとも思った。映画でどのような理由であるのか、是非確かめて頂きたいのですが、佐藤浩市さんの視点から描くことでそれを想像してほしいという風に描きました。

 

Q、キャスティングへのこだわりはありましたか?

A、佐藤浩市さんは最初から、完治にぴったりだと思いました。演技も哀愁があり、料理も作って頂いたりと作品の中でも何一つ違和感のない完治そのものでした。本田翼さんが演じる敦子は完治が弁護した被告人で、色々抱える女性ですが、事件後に完治にあるお願い事をしに行く。そこでひょんなことから食事を共にすることになるのですが、純粋に美味しいと言う芝居をした。その時の純粋なリアクションが本田翼のくったくのなさにも結びつき、その演技の中でも、素直さが強調され共感を呼べる役になったのではと思います。

 

Q、原作の設定よりも少しキャストの年齢が若いように思えますが

 A、原作は完治が60歳を少し過ぎている。その年齢で敦子との微妙な関係を表すにはもう少し若い方がいいと思った。すると25年前の30代も同一の配役で出来るのではないかと考えました。さらに20代の過去もあるのですが、そこは撮り方で一工夫しています。 

Q、佐藤浩市さんは20代女性が選ぶダンディな男性1位に選ばれたこともありますが・・

 A、そうなんですね~。20代にやっぱり選ばれるんですね、浩市さんは(笑)そうゆう意味でも、COLORS*WEBマガジンの読者層である20代の若い世代にこの作品が届いて欲しいと思います!

 

Q、原作との結末の違いとは

 A、原作では本当は任侠映画みたいに完治がやくざの部下を警察に売られた逆恨みで刺されるという結末も桜木紫乃さんは考えたようなのですが、実際はそうなっていません。映画ではさらにもう少しユーモラスにしたいと思ったんです。

そういった意味でも、原作よりも“救い”は描けているかなと思います。それに起終点駅という漢字にルビをふってターミナルですから、終点にやってきた男が起点に立つということも描きたかった。

桜木さんも出版社の方もとても前向きに面白がってくれたので、原作との違いが生まれたんです。

 

また、劇中での“家の在り方”にもその違いが関係していまして。北海道は、二軒続きの長屋が多い。ヒントは「隣の家との関係性」。実際に実在するイメージ通りの家が無かったので、オープンセットで作っちゃったんですよ。

家の中での完治の料理も実際に佐藤浩市さんが作っています。いくらの醤油漬けもザンギ(唐揚げ)も。

 

Q、食べるシーンが印象的でしたが・・

 A、もちろん意図して作っています。人は食べることで生きている。完治は25年間引きこもって生きているわけですが、先ほども触れた敦子が完治の作った料理を食べると、美味しいと言う。美味しいの一言で、完治は自分の作ったものを誰かと分かち合うという喜びを感じたんだろうなと、料理を喜びの共有と言う意味合いにしました。

 

劇中にはザンギが多く登場しますが、浩市さんのオリジナルです。オイスターソースを加えた濃い目の味付けで。本場の釧路ザンギとは少し違いますが、本当に美味しそうに映ると思います。

 

 

桜木紫乃さんの原作には“ 愛とは呼べない愛 ”

親子でも男女とも違う“ 親愛なる情 ”のようなものを感じます。そこを大事に本作を描きました。その部分を特に注目して観て頂きたいです。

(次回作は決まっていますか?)

既に決まってはいます。まだ公表できませんが・・。楽しみにしていてください。他にも自分から原作を選んで持ち込んでいる作品もあるそうで。

 


 

こっそり次回作についても教えて下さる時折面白く、とても優しく暖かなお人柄が印象的な篠原哲雄監督とのインタビューでした。

 


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 観客の声

 フランス映画のようでした。日本映画特有の、伏線を貼って辻褄をきっちり合わせるというようなところがなく、間を大事にしていました。ラストシーンの車中での佐藤浩市さんの表情の変化に感動しました。(C.Tさん)

 

 珍しいほど、セリフが少ない作品でした。そのため、役者の方の演技に圧倒され、役者力を感じました。それと間ですね。間が長い分、見ている側も一緒に考えさせられ、物思いに耽りました。優しい気持ちになったり、過去の自分も思い出しました。過去に止まってしまった事、あるきっかけで再び進めた事など、人はそうして誰かの影響を受けて生きていくのだと思いました。この映画は誰にでも同じような経験があると感じさせる作品です。(K.Mさん)

 

 食べるという行為の意味が、泣き恋人への懺悔と、生きていかなければない償いのように感じました。美味しいそうな食卓のはずが、少し味気ないものに見えてしまう。最後のいくら漬けを作るシーンは過去と決別する姿に見えた。私の中でこの作品のテーマは“罪と許し”のように思えました。(J.Yさん)

 

http://www.terminal-movie.com/

2015年11月7日(土)絶賛公開中!

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Yui

Yui

図書館司書とシナリオライターの二つの顔を持つYUIです。 伝統芸能に精通しており、歌舞伎、邦楽、落語、着物の魅力を広めたいです。