Secret of girlfriends vol.3 福井伸実

モデル、女優、アーティスト、クリエイター…、各分野で活躍するタフな女性達の現場を離れたふとした素顔、ちょっぴり意外な一面を垣間見る連載企画、『シークレット・オブ・ガールフレンズ』。

COLORSが撮り下ろすフォトエッセイで彼女達の秘密に迫ります。

第三回は、“恋する絵描き”の異名で乙女心を瑞々しく描写し、現代アートシーン、サブカルシーンの両面から熱視線を浴びる新進気鋭の芸術家、福井伸実さんの登場です。

sog3


 

DSCF3263

初めて会ったあの日も彼女は裸足で、真っ白なワンピースもろともその身に筆を走らせて、屈託無く笑ってくれていた。

丁度三年前の今頃、僕のオフィスのある町に休止前最後のGEISAIが来ると偶然聞きつけ、その時はほんの軽い気持ちで立ち寄るだけのつもりだった。

にも関わらず、村上隆氏のお眼鏡に叶った優秀なはずであろう全ての現代アート作家達を差し置いて、彼女のそのまるでペディキュアよろしく露出した素足に跳ねた絵の具の彩りだけが鮮明に脳裏に焼き付いてしまったのだった。

今思えば、その情景自体がすでに完成された絵画のようでもあった。

 

 

僕はその記憶をもう一度重ね、今、目の前の彼女を見つめている。

やはり今日も彼女は自身で描き出した象徴的な少女にその身を包まれてにっこりと微笑んでいるのである、デジャヴュでなく。

DSCF3278

彼女は、いつでもどこに居ても笑っている子だった。

過去の苦労話や苦い失恋話、漠然とした将来の不安や日常の瑣末な悩みに至るまで、口にするそれが例えどんな話題であっても彼女は笑みを絶やさなかった。

DSCF3282

それからの三年間、彼女を追い続ける中で当初は見極めることの出来なかった、彼女の笑顔の裏に差す僅かな陰りが少しずつ見えてくることとなる。

きっかけは過ごした歳月や交わした言葉でなく、彼女の作品群としっかり向き合うようになってから。

図らずもそれは彼女自身が描き出した無数の少女達がずっと訴え続けてきたことだった。

DSCF3284

だからこそ今回も、一見しただけではいつもと同じ笑顔にしか見えないそれに、再び変化が訪れていることを今後こそ見逃さなかった。

そして僕は作品を見やる。

それは確信に変わる。

何故なら、作品の中で眠る少女の表情も、筆のタッチもまた少しだけ、でも間違えなく強く、穏やかになっていたから。

 それは、まるで自己防衛するかのように幻の愛情を盲信し続けた、あの少しだけ淋しげな諦念のあるかつてのそれではなく。

あの日僕が気づくことの出来なかった、上手に僕を騙しおおせたそれでもなく。

過去を悲しみとして享受してなお、目を逸らすでもなく、耳を塞ぐでもなく、背を向けるでもなく、真正面から抱きとめ、あまつさえ口づけて、過去を引き連れて共に前を向く凛とした強さを持った彼女の笑顔だった。

DSCF3287

技法の変化を説明する彼女の指が示すその先、画の中の少女と再び見つめ合う。

そこには技法だけでは決して説明のつかない、まだ少し戸惑いがちに、けれど確かな意思を持った微笑をたたえた表情が伺えた。

DSCF3296

 

福井伸実(ふくいのぶみ)

恋する絵描き。
 武蔵野美術大学卒。在学中から、ゲスの極み乙女。、アルカラ、さめざめなど多くのアーティストのアートワークを手掛け、現在もフリーで活動を続けている。

自身でも精力的にグッズ展開、イベント開催、絵画制作や展示を行うなど、多岐に渡った活動を続けている。

公式サイト:http://fukuinobumi.jp/