東京芸術劇場のあの巨大パイプオルガンを操る、副オルガニスト 川越聡子さんに直撃!

東京芸術劇場コンサートホールにあるパイプオルガンを訪ねました。
ホールに着き、パイプオルガンのステージ左袖にある控室から、楽器の正面へと移動するとその足元の高さに気づきます。
楽器を案内してくださるのはパイプオルガン奏者の川越聡子さん。
彼女は、芸劇の副オルガニストに就任して数年経った今でも、この高さに慣れず本番の時は観客席を一切見ずに、パイプオルガンを目指して真っすぐに歩くのだとか。
 

 

川越    「ステージ袖から歩き始めて、観客席や下を見てしまうと、別の緊張もしちゃって演奏が固くなってしまうので、見ないようにしています」

MIKO   確かにここ高いですもんね。 客席から見てるとそんなかなぁと思いますが、この場所で立ってると気持ちがわかりますね。 

そしてパイプオルガンに座り、静かに弾いてくれましたが、その演奏は力強く、思わず「カッコいい」と思ってしまいましたが、そんな彼女もまた 「どんどん男前になっていくんですよ」 と話していました。

パイプオルガンを弾いてる川越さんは格好良かった

 

そして話しの中で彼女が「オルガニストにも三種の神器ってあるんですよ」と。

MIKO   ぜひ、聞かせてください。

川越   「まずはオルガン専用の靴です。 パイプオルガンには足鍵盤があり、とても重要な役割を果たしています。 だから足の感覚が伝わりやすく、適度な滑り感があり、ソールとヒールのバランスが良い、このシューズが必要なんです

三種の神器の残り2つは、楽譜ポストイットだという。

川越   「ポストイットは楽譜にたくさん貼るのですが、同じ曲を演奏するにしても、会場が違うと楽器の仕様や操作方法も全く違うので、目印やメモの内容も変わってくるんですよ。 ポストイットを使えば、簡単に貼ったり剥がしたりできるので楽譜が汚れず、とても便利なんです。 だから、色々なタイプのポストイットを持ち歩いているんですよ

なるほど、便利なのはわかりますが、三種の神器のひとつがポストイットとはビックリしました。 それだけオルガニストにとっては大事なもののようですね。


 

前回の話しの中で、弾くだけじゃなくメンテナンスも仕事と話してくれた川越さん。手と足のそれぞれの鍵盤の調整具合や、約9000本のパイプの音の鳴り具合、鍵盤の左右にあるストップと呼ばれる124個もの音色を変えるノブなど、そういったものをひとつひとつ季節の気温や湿度などの変化に合わせて対応すべく、オルガンビルダーと呼ばれる人と相談しながら、メンテナンスを行っていると聞きました。 「つかの間の休みの日を利用して趣味など何かしていますか?」 の問いに、川越さんは 「アルゼンチンタンゴを習っています」 という。 パイプオルガンの足鍵盤を弾いている姿をお話の前に見ていたので、思わず納得してしまいました。

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そして、続けて 「あとは仲間とお酒を飲みにいくこともあります

MIKO   何を飲まれますか?

川越   「ベルギービールが好きでよく飲みますよ。 当館内にあるベルオーブというお店には、演奏会の打ち上げでよく行きます。 あっ、ここのワッフルも美味しいんですよ! 

東京芸術劇場内1Fのオープンスペースに広々としたテラス席もあり、ここに100種類以上のベルギービールがあるという。そしてカフェや軽食に加えて、ヨーロッパの代表的な料理も楽しめるのだとか!   「もしかしたら出演者に会えるかもしれないですよ」と話していました。

MIKO   なかなか休みが取れないと思いますが、他にしてみたいことありますか?

川越   「長期で休めたら、世界史が好きなので、ヨーロッパの世界遺産を訪れる旅に行きたいですね。 そしてオルガン詣でがしたいです。 時代や国によって全く異なるのがパイプオルガンの魅力です。歴史ある古い楽器を訪れるのは本当に楽しいですよ

今年の夏頃にはベルギーとスペインに仕事で滞在したものの、観光の時間はごくわずかだったとのこと。


 

最近、ラグビーのW杯で五郎丸さんのルーティンとかが話題となりましたが、自分のルーティンというか、こだわりや縁起を担ぐとかありますか?

川越   「ルーティンとか縁起を担ぐとかは特にありませんが本番がある日は、演奏する時間帯に自分のピークを持っていけるよう、体調をコントロールするようにしています。たとえば夜遅い時間に演奏する日は、午前中は無理をしないように、可能であればあえて寝坊をして、体を休めるようにしたりしていますね

あまり長く時間を空け時間を持て余すことも、ギリギリでもダメだという川越さんは、演奏までの行動を逆算していると話し、続けて「本番前の30分くらい前にバナナだけ食べるんです」という。 演奏前に食べ過ぎても、頭がぼーっとしてしまうのでしょう。 適度な緊張感を保ちながら、出番を待つ彼女もまたしっかりと本番に備え準備し、そこへピークを持っていくというプロ意識のある素敵なオルガニストでした。

客席を見つめる川越さん 

始めに話した本番の出演時、観客席や下を見ないで歩くといった彼女が取材の中で、じーっと観客席を見ている時があり、その姿が印象的で思わずシャッターをきってしまったが、彼女の見つめるその先には何が見えているんでしょうか? 次の演奏の準備や本番のことなのか? それとももっと先の未来なのか、その質問をするのは野暮ったいと思ってしまいました。


今回の取材を通して、何故カッコいいと感じたのか、弾いてる姿は本当にカッコ良かったんですが、自分はこうして生きていくんだという道筋を通して、真っすぐに歩んでいこうとする眼差しや静かであるけれど力強い意思や姿に、カッコいいと思わせたのではないかと。 彼女は「どんどん男前になっていく」と話していたけれど、芯が通った素敵な女性でした。

新進気鋭といわれプレッシャーも感じるでしょうが、彼女なら、いや川越聡子さんなら、それを跳ね返すだけのものも十分に備わっていると感じずにはいられませんでした。

これからのオルガニスト川越聡子さんに注目したいと思います。


 

川越聡子:正面(C)谷藤貴志 (1)

川越聡子(かわごえさとこ) オルガニスト

東京藝術大学音楽学部オルガン科卒業、同大学院音楽研究科修了。フランス国立トゥールーズ音楽院高等課程(CESMD)修了。オルガンを小林英之、廣野嗣雄、早島万紀子、ミシェル・ブヴァール、ヤン・ヴィレム・ヤンセンの各氏に師事。第2回アンドレア・アンティーコ・ダ・モントーナ国際オルガンコンクール第2位入賞。2007年より所沢市民文化センターMUSEの初代ホール・オルガニストを務め、現在は東京芸術劇場副オルガニストとして、国内外での様々な演奏活動、オルガン音楽の普及・啓蒙活動も積極的に行っている。洗足学園音楽大学非常勤講師、日本オルガニスト協会、日本オルガン研究会会員。

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何でも簡単にネットで見つけてしまい、他人のいうことに影響されやすい時代だからこそ、自分を見失わずに、今のスイートスポットを探し、伝えることに挑戦していきたい!